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水月湖の年縞
「長い年月の間に湖沼などに堆積した層が描く特徴的な縞模様の湖底堆積物」のことで、1年に1層形成されます。縞模様は季節によって違うものが堆積することで、明るい層と暗い層が交互に堆積することでできるものです。
未知の出土品がいつの時代のものかを知る手段の一つが「放射性炭素年代測定法」です。生物の体に含まれ、時間の経過とともに一定のペースで量が減少する「放射性炭素」の残量を測定し、年代を逆算する手法です。
しかし、この放射性炭素年代測定法では時代によって数百年から数千年のズレがあるのが悩みでした。生物の体に含まれる放射性炭素は、もともとは大気中の放射性炭素を取り込んだものですが、時代によって大気中に含まれる放射性炭素(炭素14)の量にバラツキがあるため、全く同じ生物でも、時代によって体に含まれる放射性炭素の量が異なるからです。
このズレを修正するためには、「年代ごとの正確な放射性炭素の量」がきっちりと整った「ものさし」が必要です。この「ものさし」となるのが年縞なのです。
年縞は1年に1層形成されるため、いつの年代のものなのか正確にわかります。その年縞に含まれる葉の放射性炭素の量を測定することで、正確な年代と放射性炭素の割合の関係が明らかになるのです。
水月湖の年縞は考古学や地質学における「世界標準のものさし」として、年代測定の精度を従来より飛躍的に高めました。
名勝「三方五湖」のひとつ「水月湖」は、年縞が形成される環境として「奇跡」と言われるほど理想的な湖です。その理由は、①直接流れ込む河川がない ②湖底に生物が生息していない ③時間が経過しても埋まらないためです。
水月湖では湖底がかき乱されることがなく、美しい縞模様が形成されます(①②)。また、断層活動のため湖が埋まることなく、水月湖では7万年もの間年縞を形成し続けており(③)、これほど長い間連続している年縞は、世界でも他に例がありません。
年縞は出土品の年代を測定するだけでなく、気候や森林の様子等の自然環境を知る手がかりにもなります。年縞に含まれる花粉は、周辺の林や森から飛んできたものであり、その種類や量を調べれば、その時代の森の様子や周辺の景色を蘇らせることができます。